どこをデジタルにするか「軸」を持つことが大切

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対談場所は、南区出島にあるデジマストックの2階。一枚板のテーブルやデザイナーズ家具・照明などが豊富な品揃えで販売されています。
山口:ヤマネホールディングスはずいぶん前からDXデジタル変革に取り組んでこられましたね。
山根:「なぜデジタルにするのか」という軸を持つことが、すごく大事です。デジタルにする目的はリアルタイム性と双方向性。経理も紙帳簿のままだったらデータにならない。excelにするのも本当のデジタル化じゃない。きちんと分析可能な状況になるということです。 加えて、そのデータの検証性と活用性という部分があってこそ、今のデジタルだと考えている。
山口:その通りです。全てが繋がっていれば、当然効率的になるし、全部を人間がやらなくてもよくなる。その軸が会計なのか、マーケティングなのか、業務フローなのかがあるはずなのに、「DX」っていう言葉が一括りにされすぎている流れがあります。

ヤマネホールディングスのDX改革

記者:ヤマネホールディングスは、どういった組織で取り組まれていますか?
山根:マーケティングのデジタル化と、業務のデジタル化。各分野のミッションをより明確にしました。最初は混在して進めていたのを、機能を分割しました。
山口:おそらく、多くの企業で特にトップの意識が誤認してるような気がします。業務フロー改善の話をしてるのに、なぜかマーケティングやSNSの話になってみたり。デジタルマーケの話が、社内システムの話と誤認されているとか。
山根:中小企業の場合、なんでもやならざるを得ないところもあります。デジタルのことが分かる人材って、情報機器・情報システム室に近い人材になりやすい。その人が多機能的に働いてもらわないと、という状況があるとは思うんですよね。 でも、きちんと整理していく段階になりました。

ヤマネホールディングスがデジタル人材確保のために行ったこと

記者:マーケティングの部分での配置転換含む社内体制の新たな動きは、どうやって加速されましたか?
山根:特徴的なのは、社内人材を広島本社に限定しない形にしました。東京には副業人材も含めて豊富なんです。デジタルだから、どこに住んでいるかの壁を越えることができる。

山口:私自身も広島に拠点を構えてるけど、東京のお仕事や広島以外のお仕事は、かなりのボリュームありますし。コミュニケーションが100%リアルである必要はない、それもDXの働き方改革の中で気付かされた部分です。
じゃあ100%オンラインでいいのかというと、そういうわけでもない。やはり「会ったことがある」というのは大事です。何度か会ったことがあって信頼関係が築けていれば、コミュニケーションツールは、テレビ会議でも、電話でもメールでも成り立ちます。御社は、社内にその仕組みを取り入れられたっていうことですね。

コロナで住宅業界の営業手法が大きく変容

山根:以前の住宅業界は総合住宅展示場に出展し家を見てもらうという形が基本で、そこに力を入れていました。
山口:こうした営業手法が、コロナ禍で大きく変わりましたね。
山根:展示場がイベントをしてくれてテレビで宣伝されて、人が集まるという構図があり、家を見てくれる人の流れができていました。しかし2020年のコロナ禍以降、この流れが止められたわけです。
ある意味、住宅を販売していくことにおいて、本当にその方法しかなかったのか?というところに気付かされたのが2020年でもあります。インスタやYouTubeの住宅関係のコンテンツは、2020年を境に急に増えてると思います。大手に限らず、地方の工務店も積極的に取り組まざるを得なかった。
山口:短期間にSNSやYouTubeがとても重要なものだと認識する必要性が生じたわけですね。
山根:これまでは住宅展示場に来場いただいた人と「偶然に出会う」っていうのがあったんですね。 コロナ禍になってからは”予約した人”にしか会えなくなった。自社サイトで予約をしてもらってから、展示場でお会いするという流れで、これはもう劇的な変化です。
自社サイトや自前の「メディア」をちゃんと作っていっておかなければ勝負にならない。加えて、若者たちのメディア接触が変わったのも背景にあります。この中でどのように新しい出会いを作っていくかかが、住宅メーカーの知恵の絞りどころになったわけです。

見込み客の獲得導線を整備

山口:住宅は検討期間の長い高額商材です。ネット広告に求めらるのは、その価値や世界観を伝えることと見込み客の獲得。見込み客の獲得状況を把握していく過程で、課題になっていることが何かを一つ一つ解決することが大切ですね。
山根:広告を打って終わりというやみくもな戦略でなくなったことは大きな成果です。また首都圏や大手メーカーの成功事例がすべて当てはまるわけではありません。各地域で特色に違いがあるので、東京と広島で仕事をしている山口さんの知見は大変有り難い。

アフターコロナの今後のビジョンは?

記者:アフターコロナでデジタルマーケティングの動きがどんどん加速していくと先ほどもお話いただきましたが、 今後のビジョンはいかがですか?
山根:これから面白いのは、リアル集客の面白さ。人と人とが会うことの熱量が販売に繋がるっていうスキームは変わらない。
山口:そうですよね、リアルとデジタルのコミュニケーションをどう使っていくかのかが肝。いかに展示場に足を運んでいただくのか、おそらく、何も知らずにふらっと展示場に来るお客さんが減って、もう減って(笑)webやSNSでものすごく事前リサーチしてこられてから、展示場で実物を確認をされるっていう流れになってるんじゃないかなと。
山根:それに加え、口コミも大事にされながら、SNSの口コミの情報が偏ってることも知っていて。だからこそリアルを求めてこられます。これからは、イベントの種類も変化していくし、そのイベントのデザインが面白いですね。
山口:一度コロナでデジタルに振り切ったからこそ、リアルの価値が再確認された。リアルの時間を共有する、「会う」ことに価値が高まっていますね。
山根:リアルならではの、触ってみて木の質感を感じる…そんな空気感を共有していただく。画面だけじゃないライブ感。そうしないと、香りも雰囲気もわからない。そういうことにお客が一番気付かれています。ネットじゃわからないものが、リアルにはある。これからも大事にしていきたいです。

地方こそ正しいデジタルマーケを

山口:僕は、創業時から、基本的には地方や広島の企業さんに「正しいマーケティングのあり方」をお伝えするのがミッションだと思っています。
私自身も歳は取りますし、電通を辞めてから時間は経過していきますが、オンラインの繋がりで東京のお仕事もできる環境があり、広島にいても先端的なソリューションが提供できる状況にいます。多くの企業さんに、これから「あるべきマーケティングの姿」へ誘導していきたい。
記者:やっぱり近くにいると、安心感がありますしね。
山根:東京だけじゃ難しいんですよ…特に広告はターゲット層がどのメディアをどう見てるか、地方によってその色が違うし匂いがある。広島でどこが成功したのかという情報は、東京ではなかなか伝わってこない側面もある。「広島ではこのメディアで成功してるけど、東京ではそうではない」という事例を知ってるのが大事。
山口:そうですね。また、山根木材さんの家がリアルに建ってるのは広島です。そのリアルの価値観や空気感を、デジタルを組み合わせていかに伝えていくか、そのアイデアや企画は広島にいれるからこそ、山根社長との人間関係があるからこそ、前進してるところだと思います。
記者:理解しました。東京のノウハウもいるし、でも、やっぱり地方でやろうと思ったら、その土地の会社ならではのメリットもたくさんあるということですね。
山口:そうですね。それに、地元に根付いた仕事は、0から1を生み出すのに近いものがあり、やりがいもあります!地方の活性化にも繋がる!
ヤマネホールディングス 代表取締役社長 山根 誠一郎氏

ヤマネホールディングス 代表取締役社長 山根 誠一郎氏

1998年一橋大学商学部を卒業。ソフトバンクを経て、2000年山根木材に入社。11年2月に社長に就任。1973年5月生まれ、広島市中区出身。
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同じ敷地にあるショールーム、リニューアルされた納得すまいる館。木がふんだんに使用されている空間に、上質な家具が配されています。家づくりについてもわかりやすく紹介されていて、まさにリアルが体験できる場です。

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