広島経済大学 メディアビジネス学部 宮田教授とデジタルマーケティングイノベーションラボ代表 山口ユウジの特別対談

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宮田:広島のデジタルマーケティングの現状は。
山口:広島には、デジタルマーケティングやインターネット広告を扱う広告会社がほぼありません。福岡や大阪には、東京資本の支店がそれなりにあり、Yahoo!やLINEも福岡に拠点を持っています。しかし、残念ながら広島は素通り状態です。広島に広告代理店は150社ぐらいあると言われているのですが、デジタルに力を入れているところはありません。そのため、ここにビジネスチャンスを感じ、1年半前に会社を設立しました。
広島経済大学 メディアビジネス学部メディアビジネス学科...

広島経済大学 メディアビジネス学部メディアビジネス学科 教授 宮田 庄悟

1979年4月~2019年12月 (株)電通および国内外の出向先にて、マーケティング、広告、広報、危機管理、コンテンツ、スポーツ、ダイレクトマーケティング、海外事業など幅広い分野に従事。アメリカと中国に駐在してスポーツを含む多くのプロジェクト参加、スポーツマーケティングの分野ではオリンピック、FIFAワールドカップを始めとして多くのイベントに関わる。2014年2月よりラグビーワールドカップ2019組織委員会にてマーケティング、広報、チケッティングを中心に大会運営のいくつかの分野も担当し、大会のブランド戦略、マーケティング・コミュニケーション戦略の構築、実施を行った。
2020年春、同大学の教授に就任。「デジタルマーケティング論」などの講義を担当

デジタルマーケティングイノベーションラボ 代表

デジタルマーケティングイノベーションラボ 代表

上級ウエブ解析士

数々の難解案件をこなしてしきた元電通マン。ローカルのデジタルマーケティングの第一人者。
電通で培った経験を活かし、2019年デジタルマーケティングイノベーションラボ設立。オン×オフ連携、SEM、CRMとフルファネルでのデジタルマーケティングを得意とするデジタルマーケティングコンサルタント。
乗り鉄。
尊敬する人 小林一三翁

広告と顧客管理(CRM)をセットで提案 マーケティングパートナーとして企業を支援

宮田:貴社の特徴は。
山口:当社は、広告を打って終わりではありません。デジタルの世界では、商品が購買につながったかどうかも大事ですが、顧客化することも重要もです。一見さんではなく、継続的なお客様になってもらうこと、それが大切です。そのため、当社では、顧客管理(CRM)まで関わっています。顧客になってもらうための戦略を立て、顧客情報を蓄積。そして、顧客情報に合わせたコミュニケーションを考えています。広告とCRMをセットで提案できること、そこが当社の強みです。クライアントと二人三脚で取り組み、パートナーとして支援していきたいと考えています。
宮田:ピーター・ドラッカーは「ビジネスの目的は、顧客の創造だ」と言っている。要は、お客様を作って、長期的なお客様に育てていくということ。一度買って終わりと思われている家も、メンテナンスやリフォームをすることもある。そんなとき、顧客として関係を築いていなければビジネスにつながらない。売って終わりではなく、きちんとコミュニケーションを取り、関係を築いていかないと、お客様も育っていかないし、ビジネスも育っていかないということですよね。

デジタルツールを効果的に取り入れることで 利便性の向上と、大幅なコスト削減へ

宮田:支援による具体的な成果実績は。
山口:現在、弊社が直接支援しているのは、地場大手企業をメインに、そのほかの地域を合わせ20社弱です。また、電通や電通西日本経由でお手伝いしているクライアントも15社あり、広島のみならず東京の企業の支援にも携わっています。たとえば、広島のサービス業の会社では、月に数百万円をインターネット広告に投じていました。当社が携わらせてもらうことになり、細かくチェックしていくと、運用ノウハウが足りないために、無駄が発生していました。そこをしっかり支援し、効率化を図りました。

宮田:貴社の顧客層は?
山口:EC事業を行う企業はもちろんですが、意外と多いのがB2Bです。マーケティングは、何かを売るための活動全般を指します。社員が取引先と交換して得た名刺は、会社の資産です。顧客リスト化していき、お付き合いの有無や濃度をきちんと管理し、どういうアプローチをしていくか。こういうところもすべてデジタル化できます。それにより、効率的な営業戦略をすることができ、結果、営業人員の削減にもつながります。
宮田:デジタルマーケティングは、規模や業種に関係なく、やらなきゃいけなくなっている。とはいえ、きちんとCRMができている企業は、どれくらいあるんだろうか。
山口:小売業では、従来からCRMが行われていました。今のようにデジタルではなく、顧客を囲い込むための連絡手段が以前は封書でした。これをLINEに切り替え、さらにもう一段階進んだものがアプリ化です。そうすることによって、印刷代、郵送代を抑えられ、一気にコストダウンにつながりました。今、多くの企業がアプリ化を進めていますよね。自由化により激しい競争環境にある電力会社においても、自由化以降、大々的なCRM施策を行うとともに、大幅なデジタル化が進んでいます。使用量の明細書をLINEへ置き換えているのもその一つです。ユーザーの利便性はもちろん、大幅なコスト削減にもなっています。

大企業と中小企業、東京と地方 企業のデジタルマーケティングの現状

宮田:大企業には、デジタルマーケティングが浸透してきているとは思うが、中小企業は。
山口:中小企業は、経営者によるところが多いというのが実状です。実感としては、ベンチャー企業においては、デジタルマーケディングを基盤にした営業活動をされているところが多いと思います。しかしながら、従来型の企業においては、ファックスで受注を受けて、郵送でのやりとりをメインにされていたり・・・。その差はものすごくありますね。特にこのコロナ禍でそれが浮き彫りになった気がします。

宮田:東京と広島の仕事の違いは何か。
山口:東京はスタッフが多く、分業が進んでいます。そして、予算規模で言うと、比にならないくらい東京のほうが大きいです。広島を含めローカルでは、分業ができていないため、リスティング広告、ディスプレイ広告、動画広告、さらにCRMもというように、トータルでクライアントをサポートできる人が必要です。それに加えて予算も小さいため、実は、ローカルのほうが仕事の難易度は高いです。

ホームページの運用、デジタル人材の確保と育成 デジタルに取り組む多くの企業が直面する課題

宮田:企業が抱えているデジタル活用における課題は。
山口:一つは、業種問わず、ホームページが営業ツールだということが理解されていないことです。多くの場合、サイト管理を総務部でされていると思うのですが、営業部が担当するべきだと考えます。例えば、初めて見積りを依頼するとき、会社のホームページを見て決めることが多い。見積り依頼の有無が、ホームページで決まってしまうんです。営業ツールという認識を持てば、運用方法も変わってくるはずです。もう一つは、デジタルツールの活用ノウハウを自社で蓄え、運用している企業が少ないということです。欧米では、デジタルマーケティングをはじめ、デジタルツールを使いこなす人材を企業が確保しています。日本においては、組織の中にそういう人材が少なく、育っていない状況です。そのため、ツールを取り入れても使いこなせていないという場面を多く目にします。
宮田:デジタルのサービスもツールも、毎日、どんどん新しいものが出てきている。貴社は東京の仕事に関わる中で、常に最新の情報や技術に触れながら仕事をされているため、いち早くそれらを取り入れた提案ができる。また、山口さんは前職の経験の中で様々な業種を担当し、マーケティングのことも熟知されている。そのため、デジタルを活用したCRM戦略のアドバイスをしながら、PDCAを回して管理することができる。そこが、貴社の強みであり、魅力ですね。
山口:企業のSNSの運用も、コストが合わなくて外注に出せないということをよく耳にします。それならば、社員で投稿内容やルールを決めて、ルーティンにしていくべきななんですが、それがなかなかできていないんですよね。
宮田:最初は、その企業の方向性やパターンを一緒に考えるなど、コンサルや指導が必要かもしれないが、その後は、部署や担当者を決めて回していかないと、企業の中にノウハウが蓄積されないというのはありますよね。

YouTube をはじめSNSでも動画広告が主流に 安価に速やかに動画を制作し、企業を支援

宮田:最近では、テレビCMをたくさんやっていた資生堂が、広告費の大半をデジタルに費やしている。若者を中心にテレビ離れが進み、今はスマートフォンしか見ない。60代においても、スマートフォンの保有率は半分くらいになってきている。そういう世の中の変化のなかで、広告のあり方も変わってきている。
山口:今、YouTubeが自ら6番目のキー局だと言っています。私自身も4マスではなく、5マスと言っています。それぐらいYouTubeの成長は凄まじいものがあります。うちの家庭もそうですが、最近では子どもがテレビよりもYouTubeを観たがる傾向にあります。さらに、ネット接続型テレビの普及が加速度的に上がるなか、YouTubeでCMをしないことに違和感を感じるくらいです。YouTubeは動画広告の代表選手ですが、そのほかのSNSの広告においても動画が主流になってきています。
宮田:日本の広告費においても伸びているのは、動画広告費ですからね。
山口:当社が関わっている施策でも、食品関連では、おいしさを伝える「シズル感」が動画のほうが圧倒的に表現に優れているため、成果もいいです。当社は、動画制作に力を入れています。動画広告が主流になってくるなかで、ネックになるのが制作費です。当社では1本3万円〜という手頃な価格で動画を制作する「かんたん動画」というサービスをしています。PDCAを回すとき、スピーディーに複数の動画広告を制作し、テストできる環境が理想的だからです。また、企業の動画広告に対するハードルを下げ、まずは始めてもらうことが狙いでもあります。そうすることで、動画広告の普及にもつながると思っています。

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